よくあるご質問
- PrecisionSEMの特徴を教えてください
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PrecisionSEMの特徴
新電子光学系の低加速分解能 W-SEM
PrecisionSEMは新しい電子光学系を採用したことによりタングステンSEM(W-SEM)の枠を超える業界最高クラスの分解能を備えた走査電子顕微鏡です。
高性能対物レンズ
独自に開発した試料の下側に設置した高性能対物レンズにより、特に厚みの薄い試料において、従来のW-SEMでは難しかった高精細な拡大画像を得ることに成功しました。
リターディング法を採用
試料に負電圧を印加して一次電子を試料直前で減速させるリターディング法を下側対物レンズに適用する独自開発技術によりW-SEMの枠を超える低加速で高分解能な走査電子顕微鏡の開発に成功しました。
高性能フローティング高圧電源採用
当社が創業以来培ってきた高圧電源技術を駆使して、高性能低ノイズフローティングSEM用電源を新規開発することにより、ノイズの少ない非常にクリアな拡大画像が得られます。
使いやすいユーザーインターフェイス
シンプルな操作画面に加え、タッチパネル操作で快適な作業が行えます。
静音設計の真空排気系
独自の真空排気系により、静粛な環境を実現しました。
観察中に動作している真空ポンプはターボ分子ポンプと小型のロータリーポンプです。大型のロータリーポンプは大気からターボ分子ポンプに切り替えるまでの間のみ動作します。小型のロータリーポンプの音は比較的小さいです。さらに必要があれば静音ボックスも用意できます。
- 画像の違いを見せてください
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二硫化タングステン微細パウダーの比較例を示します。
汎用SEM 従来
2kV(加速電圧)3000倍
新電子光学系
リターディング 4kV-2kV=2kV(照射電圧)
1kV(加速電圧)6500倍
リターディング 5kV-4kV=1kV(照射電圧)
1kV(加速電圧)15000倍
リターディング 5kV-4kV=1kV(照射電圧)
汎用SEM 従来
汎用SEM 加速電圧1kV 低加速観察 拡大比較
1kV(加速電圧)
二硫化タングステン微細パウダー新電子光学系
新電子光学系では表面状態がきれいに見えます。
リターディング
5kV-4kV=1kV(照射電圧)
- どのような試料が観察できますか?
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金属材料、絶縁物材料、試料断面、熱に弱いサンプル、ゴム、粉末、微粒子、ナノ材料、カーボンナノチューブ、トナー、顔料、半導体、透明電極、昆虫、藻類、細胞組織、カビの胞子、ジャガイモ、粉乳などさまざまな試料観察ができます。必要に応じて金属コーティングや脱水乾燥が必要になります。
- エネルギー分散型X線分析装置(EDS/EDX)は取り付けられますか?
可能です。
- SEMの設置場所について教えてください。
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設置条件
振動の多い場所、電磁波ノイズや磁場ノイズの多い場所、騒音の大きい場所、粉塵の多い場所などには設置できません。
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振動に関して:
設置場所の近くに工作機器などの振動源や電車などによる振動がある場合、十分な性能が発揮できません。
また、設置場所が地下や1階でない場合、または床がOAフロアのような振動しやすい床の場合にも十分な性能が発揮できません。 -
電磁波ノイズ、磁場ノイズに関して:
SEMの設置場所近くに電流変化、磁場変化を発生させる設備がある場合、磁場により電子ビームが揺らされ、SEM像にノイズが現れます。
例えば、扇風機や掃除機などの小型電気機器からも磁場ノイズが発生します。また、地磁気の流れを変えるような磁性体を動かすことでもSEM像は揺れます。例えば、SEM像の観察中に鉄材を含む椅子を移動させるとSEM像にノイズが入ることがあります。ドライバーのようなものでも、SEM近くで移動させるだけでSEM像にノイズが入ります。 -
騒音に関して:
音波は空気振動であり、異常に騒音を発生する装置がSEM周辺にある場合、像障害を生じる場合があります。
問題になりそうな場所に設置したい場合、あらかじめ環境測定をしておくことをお勧めします。
磁場ノイズの低減が必要な場合、変動磁場を打ち消すアクティブ磁場キャンセラーの設置を検討する必要があります。
振動ノイズが問題になる場合、床振動をSEMに伝えないようにするアクティブ除振などの設置を検討する必要があります。
個別にご相談ください。 -
- PrecisionSEMと従来のSEM光学系の違いは?
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下図をご覧ください。従来の汎用SEM(タングステンフィラメント型)光学系との大きな違いはボトムレンズがあるかどうかです。
PrecisionSEMの電子源はタングステンフィラメントで、対物レンズとしてトップレンズ(上側対物レンズ)とボトムレンズ(下側対物レンズ)を備えています。
- 対物レンズで電子線を収束するということはどういうことですか?
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松定プレシジョンの技術コラム(電子顕微鏡のレンズについて)を参照してください。
電子顕微鏡のレンズについて
- PrecisionSEMで使用されている対物レンズはどういったものですか?
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トップレンズにアウトレンズ型、ボトムレンズにはセミインレンズ型を反転させたものを採用しています。
対物レンズには一般的に下記の3種類が存在しています。
もっとも解像度が高くなるのは、試料がレンズの磁場の中に入っていて収差が小さいインレンズですが、試料が磁場の影響を受ける場合は利用することができません。 その場合は磁場の影響が少ないアウトレンズを利用することとなります。
アウトレンズではレンズの磁場の外に試料を配置することになるので、インレンズに比べて収差が大きくなります。これがボケにつながります。
両方の欠点を補ったものがセミインレンズという形になります。
PrecisionSEMでは、トップレンズがアウトレンズ型に相当します。
ボトムレンズは右図のような形状をしており、これはちょうどセミインレンズを反転させた形をしています。
- ボトムレンズって何ですか?
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ボトムレンズとは弊社PrecisionSEMの光学系において、試料の下側にある対物レンズのことを言います。
従来の光学系
新光学系
Dual Lens SEMこのボトムレンズはセミインレンズに似た形状をしているのが特徴で、アウトレンズ型よりも高解像度な画像を観察することができます。
ボトムレンズで試料を観察する場合、試料をボトムレンズの上に配置します。
この時、試料とボトムレンズの距離(試料の厚み 最大5mm)がWD(ワーキングディスタンス 試料と対物レンズまでの距離)に相当します。
- ボトムレンズとトップレンズの違いはなんですか?
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ボトムレンズ、トップレンズともにSEMの対物レンズになります。これらのレンズの違いはその形状とレンズ収差の大きさにあります。
図.トップレンズとボトムレンズの形状 トップレンズは、アウトレンズ型をしています。
ボトムレンズは、セミインレンズ型を反転させた形状をしています。形状以外の違いは、レンズの収差の大きさがあります。
トップレンズは、アウトレンズ型のため試料をレンズ磁場の外に置く必要があり、その分収差が大きくなります。
ボトムレンズでは、試料をレンズ磁場中に置くので収差が小さくなり高解像度なSEM画像を得られます。図.トップレンズとボトムレンズでの磁場の形成場所
- なぜボトムレンズだと、トップレンズよりきれいに映るのですか?
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レンズの収差が小さいためにトップレンズよりきれいに映ります。(加速電圧が同条件の場合)
トップレンズは、アウトレンズ型のため試料をレンズ磁場の外に置く必要があり、その分収差が大きくなります。
ボトムレンズでは、試料をレンズ磁場中に置くので収差が小さくなり高解像度なSEM画像を得られます。図.トップレンズとボトムレンズでの試料の位置
- 低加速電圧と高加速電圧による画像の違いはありますか
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あります。
図. 照射電圧1kV~15kVの条件でのカーボンナノチューブのSEM画像 照射電圧を変化させてカーボンナノチューブの観察を行った図になります。
照射電圧が高いほど試料表面が見えていない様子がわかります。これは照射電圧による一次電子の試料内侵入深さによるもので、試料内部の情報も混ざっているためです。下図を見てください。
1keV
5keV
10keV
図.モンテカルロシミュレーションで計算された照射電圧1kV、5kV及び10kVの一次電子侵入深さ(試料Si) この図は、モンテカルロシミュレーションを用いて計算された照射電圧1kV、5kV、10kVの一次電子の試料内(試料:Si)への侵入する深さを表したものです。
この図からわかるとおり、照射電圧が高くなるほど試料へ深く一次電子が侵入します。低加速電圧では、一次電子線が試料に深く入り込まないようになり、試料表面が明瞭に観察できるようになります。
- リターディング法とはなんですか?
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リターディング法とは試料に負の電圧を印加して一次電子を試料直前で減速させる方法です。例えば、一次電子を電子銃で3kVに加速し、試料に-2.0kVを印可すれば、試料に照射される一次電子は1.0kVに減速される。
この方法により、高加速電圧の条件で一次電子が、電子源から対物レンズまでを通過するので、収差を低減でき、低い照射電圧(低加速の一次電子線)でも高分解能な観察を可能にします。汎用性SEMの加速電圧1kVの画像
WS2粉末試料ハイレゾ低加速モードの照射電圧1kV(5kV-4kV)の画像
WS2粉末試料図.照射電圧1kVの二硫化タングステンのSEM画像
- PrecisionSEMでリターディングすることのメリットはなんですか?
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- リターディング電圧を-10kVまで印可することができる。
- WDを近づけたままリターディングをすることができる。
- 低い照射電圧において高解像度のSEM画像が得られる。
従来の光学系(トップレンズ)において、高分解能観察を行うためには、試料を対物レンズに近づける必要があります。この近づけた状態で、リターディング電圧を数kVまであげようとすると試料と対物レンズ間で放電してしまう問題がありました。
PrecisionSEMではボトムレンズにおいてリターディングを行います。(ボトムレンズ使用時のWDは5mm)試料とボトムレンズ間に絶縁板で高耐圧化することでリターディング電圧を-10kVまで印可することができます。
- なぜリターディングをすると、実効解像度が上がるのですか?
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リターディング法は、高加速電圧の条件で一次電子が、電子源から対物レンズまでを通過するので、収差を低減でき、実効解像度が上がります。
また、PrecisionSEMでは、試料近傍に磁界レンズが形成されます(下図b)。試料にリターディング電圧を印可すると電位板と試料との間に静電レンズが形成されます(下図a)。ボトムレンズでリターディング法を使用する場合には、この二つのレンズが重なり合うことで非常に強いレンズ(収差が小さい)が形成されます。これも実効解像度を上げている要因になります。
図.静電レンズの形成の様子と試料近傍における磁束密度分布
- 試料厚み5mm以上の場合は、ボトムレンズでは観察できないということは、PrecisionSEMでは観察できないということですか?
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いいえ、観察可能です。
PrecisionSEMで厚さ5mm以上の試料については、トップレンズで観察することができます。トップレンズの分解能は加速電圧30kVで3nm(WD=5mm)になります。
- 試料室自体のサイズ、セットできる試料のサイズはどれくらいですか。
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サイズの詳細については、製品ページよりカタログをダウンロードし、ご確認ください。