表面処理とは
表面処理とは、防錆や耐摩耗性などの機能を付加したり、見た目をよくする装飾性を向上させたりする目的で、材料の表面に施す追加の処理です。
自動車のボディに施されるような塗装、家電製品の表面に施されるメーカー名などの印刷、ガードレールなどの塗装の下に施される「めっき」なども表面処理の代表例です。
また、歯車や刃物のような金属部品に施される、焼き入れなどの熱処理も表面処理に分類されています。
表面処理は、削ったり溶かしたりして表面を取り除く除去加工と、塗装などのように表面に他のものを付け加える付加加工に大別されます。
表面処理の方法
よく使われる表面処理には、下記のような方法があります。表面処理のうち、電気の作用を使用し、専用の電源を必要とする処理は、表中赤い文字で示しています。
区分 | 名称 | 解説 |
---|---|---|
清浄 | 洗浄 | 油や表面酸化物、バリや異物を除去する処理です。 塗装やめっきの寿命を延ばせます。 清浄の中でも、ブラストは研削材を、ホーニングは砥石をそれぞれ利用するため、これらは清浄と研磨の両方を行う処理とも言えます。 |
ブラスト | ||
ホーニング | ||
研磨 | 機械研磨 | 表面を磨いて滑らかにします。 一般的に研磨というと砥石やブラシでこするイメージですが、化学研磨や電解研磨は、表面をわずかに溶かして滑らかにします。 電解研磨は、電気分解を用いて、溶液の中で部品の表面を溶解させます。 |
化学研磨 | ||
電解研磨 | ||
塗装 | スプレー塗装 | 表面に塗料を付加する加工です。 耐食性や装飾性向上のために行われます。 電着塗装とは、専用の塗料を溶かした溶液を電気分解し、部品の表面に塗料を析出させる方法で、自動車のボディの下地などに使われています。 |
電着塗装 | ||
めっき | 電解(電気)めっき | めっきとは、部品の表面を他の金属の薄い膜で覆う加工です。 電解(電気)めっきは、溶液を電気分解し、部品の表面に塗料を析出させる方法です。 主には鉄などの金属に対して行われ、耐食性や装飾性をもたせています。 装飾のため、プラスチックの表面にめっきを行うケースもありますが、近年では塗装技術の向上もあり、数は減ってきています。 |
化学めっき | ||
溶融めっき | ||
熱処理 | 表面焼き入れ | 金属の表面を硬くし、耐摩耗性や耐疲労性を向上させる処理です。 金属を加熱し、冷却することで金属表面の組織を変化させ、硬くします。 表面焼き入れでは、高周波焼き入れといって、コイルに高周波の電流を流し、いわゆるIHヒーターの要領で部品を加熱して焼き入れを行う方法があります。 |
浸炭焼き入れ | ||
窒化処理 |
表面処理の工程
表面処理にはいくつか種類がありますが、ここではめっきを例にし、電解めっきについて解説していきます。電解めっきには、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、クロムなどの種類があります。
- 1 前作業
- バレル研磨を行って製品のバリを除去し、めっきのための治具(めっきされる製品を固定し、作業しやすくする用具)を取り付けます。
- 2 前処理
- アルカリ脱脂、酸洗、電解洗浄、酸活性化などの化学処理を行い、被めっき材をめっきに適した状態に整えます。
- 3 めっき
- 治具に取り付けたままめっき槽に浸し、通電してめっきします。電解めっきでは、金属のイオンを含む溶液に電流を流すと、電気分解により、陰極側に金属が析出する仕組みを利用しています。
めっき液の中に、陰極の電極をつけた被めっき材と陽極の電極を挿入して電流を流すと、被めっき材の表面に金属が析出し、めっき被膜になります。 また、母材とめっきの種類によっては、下地めっきなど、多層にめっきを行います。
- 4 後処理
- めっきが安定するようにクロメート処理、変色防止、乾燥などを行ったり、めっき液を中和したりします。
- 5 後作業
- 被めっき材を冶具から取り外し、ベーキング処理(めっきによって製品に水素が吸収されることによる割れを防ぐため、水素を除去する処理)をして、めっきを定着させます。
電解めっきのメリット
また、電解めっきのメリットには次のようなものがあります。
- 低コスト
- 光沢感が出る
- 耐食性が生まれる
- めっきする速度が速い
- 多様な金属・合金にめっき可能
- 被めっき金属への熱的影響が小さい
表面処理に関する電源の役割
現在、表面処理技術はさまざまな業界で使用されています。とくに電解めっき処理は、今後も用途がますます広がっていくとともに、高品質で経済性に優れた技術が求められていくでしょう。
電解めっきは電気分解を利用しているため、直流電流を流す電源が必要になります。電圧が不安定だと、めっきの析出も不安定になるため、製品の品質を高めるためには電圧の安定性が求められます。
また、めっきの析出量は、積算電流に比例しますので、より多くの電流を効率よく流せることも重要です。
さらに、めっきには薬品を使用するため、腐食性ガスや高湿度により錆や腐食の発生しやすい環境になります。よって、電源筐体の耐環境性だけでなく、めっきする部屋とは別の場所に電源を設置することも必要です。
これらの問題を解決するためには、電解めっきに適した電源機器の導入が必須になってきます。松定プレシジョンでは、電気めっきに最適な電源を販売しています。