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技術コラム

吸煙・脱臭 快適な環境を作るためのにおいの基礎知識|松定プレシジョン

においとは

においの正体は化学物質です。揮発性の低分子の物質が空気中に放たれ、それが鼻の中にある嗅上皮という粘膜組織に触れることで、においを感じる仕組みになっています。化学物質の分子構造によってにおいが変わるのですが、実は分子構造とにおいの関係はよく分かっていません。

分子構造が近ければ必ず似たにおいになるわけではなく、さらに、同時に検知する化学物質の組み合わせによっても、まったく違うにおいとして感じられたりするなど、謎の多い分野です。

人間にとって嗅覚は、視覚や聴覚などの他の感覚に比べて重要度が低いと考えられがちです。しかし、口に入れた食べ物のにおいで腐敗や異物混入などの異変を感じるなど、嗅覚には重要な役割もあります。

またガスなどには、あえて人が不快に感じるにおいを添加することで、ガス漏れなどの危険を察知できるようにしているなど、においが社会において果たす役割も少なくありません。さらに、においはリラックスや不快感など、人の感情に大きく影響を与える環境要因でもあるのです。

におい物質の濃度とにおいの感じ方

空気中に含まれる分子の量が非常にわずかであっても、人はにおいを感じられます。におい(化学物質)の種類にもよりますが0.1ppm(1000万分の1)あれば感知でき、10.0ppmもあればかなり強いにおいとして知覚できます。ただし、空気中のにおい物質の濃度と、においとして感じる強さは比例関係ではありません。

化学物質の濃度が0.1ppmのときに比べ、0.5ppmのときに、5倍の強さでにおいとして感じるわけではないのです。人が感じるにおいの強さと、におい成分の濃度はウェーバー・フェヒナーの法則にしたがいます。これは「人間の感覚の大きさは、受ける刺激の強さの対数に比例する」というもので、においだけでなく、音や味覚、光の強さなどの感じ方も、この法則にしたがうといわれています。

ウェーバー・フェヒナーの法則
ウェーバー・フェヒナーの法則|吸煙・脱臭 快適な環境を作るためのにおいの基礎知識

悪臭による影響

においの中でも人が不快に感じるものを悪臭といいます。

悪臭と感じる化学物質でも、人体には無害なものはあります。しかし、悪臭は人の脳にとても強いストレスを与えます。一方で、有害な化学物質でも無臭な場合もあります。また、悪臭と感じられる化学物質の中には人体に悪影響を与えるものや、長期間吸い続けると健康障害を発生させるものもあります。ですから、製造業や研究機関のみならず、悪臭を感じる場所では、できるだけ速やかに悪臭を取り除き、においを広げないことが大切です。

製造業や開発研究機関の作業現場においては、薬品や接着剤・塗装・印刷などに使われる溶剤のにおい、UVプリンタや3Dプリンタ・樹脂成形のにおい(揮発性有機化合物:VOC)、レーザー加工(レーザーマーカー)のヒューム、はんだのにおいを伴う煙などが、悪臭として挙げられます。また、特にはんだの煙や接着剤、溶剤などのにおいには有害なものもあり、健康被害につながるものも多いです。つまりこのような現場では「臭いから」だけでなく、作業者の健康を守るためにも、においを広げないことが求められます。

悪臭による影響|松定プレシジョン

においを広げないためには、発生源の密閉や清掃を徹底するといった対策が有効です。例えば接着剤や溶剤が保管されている容器はフタをしっかりと閉めるなどの行為です。一方で、においやにおいの元を密閉できない場合には、脱臭装置によってにおいを除去したり、においを含む空気を排気装置によって排気したりするなどの方法があります。

また、においの元が有機溶剤などの場合は、VOC測定器での濃度測定や換気などを含めて「大気汚染防止法」などの法令で決まっていることもあるので、そのような場合には、必ず法令にしたがいましょう。

脱臭と消臭

においをなくすには、2つの方法があります。一つは脱臭で、もう一つは消臭です。
脱臭:におい物質を抜き取って除去すること(物理的)
消臭:におい物質を消してなくすこと(化学的)
脱臭は、換気したりにおいを吸着するなどの物理的な方法を意味します。一方で消臭は、他の化学物質を添加してにおいの元から分解するなどの、化学的な方法を意味します。

作業現場のはんだ煙や有機溶剤などのにおいは、においの元から消すことはできません。そこで、このような環境では、脱臭が重要になります。脱臭方法には次のようなものがあります。

におい物質の濃度とにおいの感じ方|吸煙・脱臭 快適な環境を作るためのにおいの基礎知識

作業現場ではんだ煙などに対して行われる脱臭法は、吸着回収法が主です。においの発生源の近くや空間で、室内空気を吸い込んでにおいを集じん、ろ過し、吸着剤ににおいを吸着させます。吸着剤には活性炭や光触媒、HEPAフィルターなどが使用されます。

吸着回収法は、におい分子の空気中濃度が比較的低い環境に対し、大きめの風量で処理するのに向いています。イニシャルコストやランニングコストが比較的低めなのもメリットです。松定プレシジョンでは吸着法の吸煙器や脱臭機を取りそろえており、不織布のフィルターと活性炭を組み合わせることで、効率よく脱臭を行います。

活性炭とは、石炭やヤシの殻などを原料に、ガスや薬品と反応させて作られたもので、古くから脱臭に使われてきました。活性炭で脱臭できる理由は、活性炭の表面に、におい分子が引き寄せられ吸着されるからです。

活性炭の表面には活性炭微細孔とよばれる直径10~200Å(10Å=1nm)の孔が網目状に連なっています。またこの微細孔は、内部で枝分かれし、まるで複雑な洞窟のような広がりをもっています。

そのため微細孔の壁は、活性炭1gあたり500~2500m2もの非常に大きな表面積をもつのです。においを含んだ空気を活性炭に通すことで、におい分子が活性炭微細孔の表面に吸着される仕組みです。

松定プレシジョンでは、はんだのにおいを伴う煙や、レーザー加工(レーザーマーカー)のヒューム、UVプリンタや3Dプリンタのにおい(VOC)、接着剤を使用する製造工程などに適した、吸煙器用アプリケーションを取りそろえています。