Search waiting|松定プレシジョン

検索中...

技術コラム

 
高電圧の測定方法 高圧デバイダ

電圧測定の基本について

電圧の測定は、電気機器が正しく動作しているか確認したり、電気回路をチェックしたりするために行われます。電圧を測定する際には、電圧計の端子を測りたい部分に対して並列になるように接続します。

学校の実験で使用する回路や乾電池で動くおもちゃなど、通常の電圧(1V~10V程度)の範囲内であれば検圧計やテスターでもかんたんに測定可能です。ただし、電圧が高い場合や逆に電圧が低い場合に、通常と同じようには測定できません。特別な装置や方法が必要になります。

高い電圧(1000V以上)を測るには

1000V以上の高い電圧を測定する場合、通常の測定器でそのまま測定することはできません。高電圧は非常に高いエネルギーを持っているため、通常の測定器を破壊してしまいます。また放電や感電といった危険もあるため、細心の注意が必要です。

高電圧測定の基本的な考え方は、「抵抗値が高いものを測定器の外側に直列につなぐ」というものです。オームの法則により、直列につながれた抵抗にかかる電圧は各抵抗の大きさに比例します。測定器と抵抗値の高いものを直列につなぐと、測定器にかかる電圧を分散できるわけです。

例えば、接続された抵抗と測定器の内部抵抗の比が9:1であれば、抵抗と測定器にかかる電圧も9:1になります。抵抗が接続されていない状態に比べると、測定器にかかる電圧が1/10になるのです。これを分圧といい、この仕組みを利用して高電圧を測定する方法には、次のようなものがあります。

分圧器(高圧デバイダ)

分圧器は、分圧回路をケースの中に内蔵し、入力用の端子と測定用の端子を備えています。高圧デバイダともよばれ、分圧器の基本的な回路図は下記のようになります。基本的には直流電圧の測定に使用しますが、電力会社から供給される周波数(50Hzまたは60Hz)であれば交流電圧の測定も可能です。

なお、分圧器は使用中に発熱することもあるので、熱による抵抗値の変化に注意が必要です。また、測定の際には、分圧器の抵抗値と電圧計の入力抵抗を考慮する必要もあります。高電圧を取り扱うため、端子に付着した異物などからリークが発生しないように注意しましょう。

高電圧の測定方法|分圧器(高圧デバイダ) 高電圧の測定方法|分圧器(分圧器の構成回路

倍率器

倍率器の原理は分圧器と同じため、使用上の注意点も同様です。ただし、分圧器は一部の周波数帯であれば交流電圧も測定できましたが、倍率器は直流電流の測定しかできません。

高電圧プローブ

高電圧プローブには、オシロスコープ用の高電圧プローブやマルチメータ用の高電圧プローブ、高電圧差動プローブと呼ばれるものがあります。一般的な高電圧プローブは、内部に高電圧抵抗を有した高電圧デバイダプローブです。

オシロスコープのプローブにはさまざまな種類があり、周波数が高い信号を正確に測れるようにするものや、測定対象への影響を軽減するものなどがあります。その中でも、特に高電圧に対応したプローブがオシロスコープ用高電圧プローブです。

高電圧プローブは、周波数によって測定可能な電圧が異なります。そのため最大入力電圧だけでなく、周波数と印加できる電圧を必ずチェックしましょう。

交流の高電圧を測定する場合には、コイルの誘導起電力を利用して電圧を変える方法もあります。

高電圧の測定方法|高電圧プローブ 高電圧プローブ(高圧プローブ)

高電圧プローブの例

VT(計器用変圧器)

VT(Voltage Transformer)は、交流回路の高電圧を測定しやすい電圧に変換する装置です。従来はPT(Potential Transformer)と呼ばれていました。VTの基本的な構造は変圧器(トランス)と同じで、下図のようになっています。入力側のコイルと出力側のコイルが巻き数を変えて、ドーナツ状の鉄心に巻かれています。鉄道用の架線電圧計もこの仲間です。組み合わせる電圧計によっては誤差が大きくなりやすいので注意しましょう。

高電圧の測定方法|VT(計器用変圧器) 高電圧の測定方法|一次電圧・二次電圧、巻数の関係

静電気測定器

高い電圧を持つ電気の代表に静電気があります。静電気はプローブなどを接触させると正確な測定ができないため、非接触の測定器を使わなければなりません。静電気を測定するための電圧計を静電電圧計といい、表面電位計や静電気測定器などの種類があります。

二つの電極が静電気を帯びた測定対象物に吸引されたり反発したりする力により指針を動かし、表面の静電気を測定する装置です。他の計測器を必要とせず、単体で測定ができるのが特徴です。

高電圧の回路は、接触していなくても放電が起こったり、漏電があった際には大きな事故につながったりします。高電圧を測定する際にはアースを正しくとるなどの安全対策も重要です。機器の仕様に合わせて、正しい使用方法を守りましょう。

低い電圧(1mV以下)を測るには

1mV以下の電圧も、通常の測定器でそのまま測ることができません。高電圧のときとは逆に、電気的な増幅を行って測定する必要があります。

また、低い電圧の場合、元の電圧が低く波が小さいため、通常であればあまり問題にならないようなノイズでも測定結果に大きな影響を及ぼしてしまいます。低い電圧を測定する際には、ノイズの除去が重要な課題です。

電圧に影響を与えるノイズには、周囲の電気機器のスイッチが入ったり切れたりする際に発生する電磁波のような外部ノイズの他、測定回路内で発生する内部ノイズがあります。

直流と交流、それぞれにおいてノイズを除去するポイントは下記のとおりです。

直流の場合

異なる種類の金属が含まれる回路において、接合点の温度に差異があると、起電力が発生します。これを熱起電力といいます。電圧を測定する回路においても、端子やコネクタ、ハンダなどにおいて複数の種類の金属が使用されます。そのため、これらの接合部の温度に差があると熱起電力が発生してしまいます。

熱起電力を発生させにくくするためには、異なる素材の導線を使用しない、端子に触れた場合には端子が冷えるのを待ってから測定する、空調や周囲の温度を調整するなどの方法があります。

交流の場合

低い電圧の交流電流を測定する際に注意しなければいけないのは、電磁誘導です。交流では電流の向きが常に変化しているため、リード線の周囲などで電磁誘導が発生してしまいます。測定器の入力抵抗を小さくしたり、2本のリード線がより線になっているものを使用したりするとよいでしょう。

低い電圧の測定では、通常ではあまり問題にならないような小さな要因でも、ノイズとなって測定に影響を及ぼします。例えば静電気による影響も無視できません。測定者の衣類など、電荷を持ったものが近くにあるとノイズの原因になります。

測定環境をシールドしたり、静電気が起こりにくい環境を用意したりすることも必要です。測定機器や回路だけでなく、周囲の環境にも気を配るようにしましょう 。

参考資料