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技術コラム

ラックマウント電源とは、電子システムや検査装置、自動試験装置(ATE)で使用されるラックに収納できる電源です。ラックは、EIAやJIS規格で決められた電子機器を収納するキャビネットで、ラックマウント電源は、その規格に沿ったサイズの電源です。

この記事では、ラックマウント電源装置の概要を説明します。基本的な種類や、特徴、そしてさまざまな業界における多様な用途について掘り下げます。

この記事は、英語のTech Tips:「Rackmount Power Supply: A Comprehensive Review 」を翻訳、加筆修正したコラムです。

ラックマウント電源の種類

1.ラックマウント型直流電源

ラックマウント型直流電源|松定プレシジョン

ラックマウント型直流電源は、ラックマウント電源の中で最も一般的な電源装置です。ラックマウント型直流電源の中には、AC-DCタイプとDC-DCタイプがあります。一般的なのはAC-DCタイプで、入力の交流を直流電圧に変換します。
DC-DCタイプは、データセンターやバッテリーシステムを利用する場合などで必要とされています。データセンターのサーバーラックは、高電圧直流(HVDC)給電から各サーバーが必要とする直流電圧に変換するDC-DC電源を使用し、交流からの変換ロスを低減しています。

これらの電源は、正確で信頼性の高い直流電源を必要とする電気通信、産業オートメーション、試験所、研究所その他の用途で数多く利用されています。主な特徴は、高効率、最小限のリップルとノイズ、信頼性の高い動作を保証し、接続された機器を保護する保護システムなどがあります。

2.ラックマウント型高圧電源

ラックマウント型高圧電源|松定プレシジョン

ラックマウント型高圧電源は、直流の高電圧を発生させる電源です。ほとんどのラックマウント型高圧電源は、AC入力を高電圧直流(HVDC)に変換して出力します。高電圧出力の精度と安定性は、特定のアプリケーションにとって極めて重要です。医療機器や産業用途、研究所などで採用されています。ラックマウント型高圧電源装置の出力電圧範囲は広く、一般的にはキロボルトから数百キロボルトの範囲です。
主な特徴は、調整可能な出力電圧と電流、ノイズやリップルの少なさ、アーク検出や過電圧保護などの安全機能が挙げられます。また、ラックマウント型高圧電源は、正極出力タイプや負極出力タイプなど選択肢が多いのも特徴です。

3.ラックマウント型高電圧アンプ

ラックマウント型高電圧アンプ|松定プレシジョン

ラックマウント型高電圧アンプは、低電圧の信号を高電圧まで昇圧し出力します。この高電圧アンプは、4象限動作に対応し、粒子加速器、科学研究などで高速動作を必要とする用途で頻繁に採用されています。これらのアンプは、高ゲイン、広帯域幅、低歪み特性を特徴としています。
ラックマウント型高電圧アンプは、高精度で増幅された高電圧信号が必要な場合に不可欠です。このユニットは、可変ゲインコントロール、入力オフセット調整、出力保護回路などの機能により、非常に貴重なものとなっています。

4.ラックマウント型バイポーラ電源

ラックマウント型バイポーラ電源|松定プレシジョン

ラックマウント型バイポーラ電源は、さまざまな用途に利用可能な電源です。正と負の出力電圧を生成できるため、両極性電源を必要とするアプリケーションに適しています。また、ファンクションジェネレータ機能を内蔵しているので、多くの電子回路や試験装置に使用されています。
このユニットは、極性に応じて出力電圧と電流のリミットが可変です。追加機能として、負荷での電圧調整のためのリモート・センシングと、正負出力の比率を一定に保つトラッキング・モードがあります。

5.ラックマウント型交流電源

ラックマウント型交流電源|松定プレシジョン

ラックマウント型交流電源は、AC電源で動作する機器や電気システムをテストするのに最適な電源です。さまざまなAC電源シナリオをシミュレートでき各国の交流電圧を模擬できる適応性の高いツールです。波形パラメータ、周波数、電圧の調整などができます。この交流電源は、出荷検査、品質管理、製品開発で頻繁に使用されています。
主な機能には、測定機能、高調波歪みの制御、直流出力、プログラム可能な出力シーケンスがあります。ラックマウント型交流電源は、さまざまな電源環境下で、電気・電子機器に信頼性の高い電力を供給します。

6.ラックマウント型電子負荷

ラックマウント型電子負荷|松定プレシジョン

ラックマウント型電子負荷は、バッテリーやその他の電源をテストするための負荷をシミュレートします。これらの電子負荷は、さまざまな運転シナリオにおける電源の有効性と効率を評価するために必要不可欠な装置です。
ラックマウント型電子負荷は、研究室や品質管理手順で頻繁に利用されています。電子負荷ユニットは、プログラム可能な負荷プロファイル、電流、抵抗の設定を持っており、設定量に応じた電力を消費します。

7.ラックマウント型充放電試験機

ラックマウント型充放電試験機|松定プレシジョン

ラックマウント型充放電試験機は、バッテリーの寿命や性能を評価する専用の試験機です。バッテリーの充電と放電のプロセスを自動化し、充放電サイクル寿命、容量、性能に関する試験・検査を行います。
ラックマウント充放電試験機は、バッテリーの研究、開発、製造において、性能と信頼性を評価するために使用されます。主な特徴としては、データロギング、安全機能、設定可能な充放電パターンなどがあります。

8.ラックマウントホルダ

ラックマウントホルダ|松定プレシジョン

ラックマウントホルダは、ハーフラックサイズの電源やベンチトップサイズの電源をラックに取り付けるためのホルダです。標準的な19インチラック内に簡単かつ整然と収納するためのホルダ(棚)になっています。
テストシステムを構築する場合、フルラックサイズばかりではないのでラックマウントホルダを用いて小型の電源等をラックに収納します。
ラックマウントホルダは、各電源に適したホルダと空きスペースにフィットしたブランクパネルを選んでいただけます。

松定プレシジョンラックマウント電源

松定プレシジョンのラックマウント電源は、コンパクトなサイズ、高効率、低発熱、低ノイズを特徴とする世界的な電源メーカーです。電気機器や半導体、自動車産業、医療機器などの研究開発や試験・検査など多くの分野で採用されています。
松定プレシジョンでは、ラックマウント型だけでなく、卓上型やモジュール型など、さまざまな電源や電子負荷などの電源機器を提供しています。電圧範囲はシリーズによって異なりますが、最大200kVに達します。松定プレシジョンのラックマウント電源の主な特徴は以下の通りです。

1.コンパクトでハイパワー

松定プレシジョンのラックマウント電源はコンパクトな設計になっています。空間効率を犠牲にすることなく性能を最適化する設計で、単位体積当たりの電力密度が高くスペースのない環境にも適しています。
コンパクトなサイズにもかかわらず、ハイパワーなので、適用範囲が広く、さまざまな産業用途でご利用いただけます。

1.コンパクトでハイパワー|松定プレシジョン

2.節電のための高効率

卓越した効率性により、松定プレシジョンのラックマウント電源は電気代の節約に貢献します。さらに、突入電流が少ないため、機器を保護することができます。
この電源は、エネルギーの無駄を省くことで、運用の費用対効果を向上させます。また、その高い効率性は環境の持続可能性にも貢献し、環境意識の高い企業にとってより良い選択肢となっています。

3.低発熱と低コストの空冷

松定プレシジョンラックマウント電源は発熱が少ないため、水冷などの大掛かりな冷却設備が必要ありません。高負荷時でもユニットが熱くならないので、空冷で運用できます。
低発熱のため、高負荷時でも安定した性能を発揮します。低発熱は、部品の寿命に貢献し、長期的な使用が可能になり、メンテナンスの頻度を減らすことで、ランニングコストも抑えられます。

3.低発熱と低コストの空冷|松定プレシジョン

4.低ノイズ/高安定性

松定プレシジョンのラックマウント電源は、ノイズが非常に小さく、精密な電圧・電流出力を提供します。また、騒音レベルも低いため、静かな使用環境になります。電源の安定した出力は、正確な電圧レベルを維持し、電力変動から機器を保護します。このパフォーマンスの信頼性は、システムの信頼性を高めます。

ラックマウント電源の基本

ラックマウント電源とは?

ラックマウント型電源装置は、重要な機器に安定した信頼性の高い電圧や電流を供給します。ラックマウント電源の多くは、19インチラック内に設置されシステムの一部として使われます。ラックマウント型電源装置は、高電力密度、熱制御、最適なスペース利用を念頭に構築されています。
ラックマウント電源の基本的な機能は、安定した信頼性の高い電圧・電流を、接続されたデバイスに供給することです。電圧変動、サージ、過負荷から保護するための多数の保護手段を備えています。

さらに、ラックマウント型電源装置には、マスタ・スレーブ接続や、アナログリモート制御やデジタルリモート制御によるリモート監視・制御機能が搭載されており、優れた信頼性を実現しています。サーバラック用の電源では、ホットスワップ機能、冗長電源オプションなどを備えたラックマウント直流電源もあります。

ラックマウント電源とは?|松定プレシジョン

ラックシステム構築のポイント

電子機器の効率的で信頼性の高い運用には、優れたラックシステムの設計が不可欠です。ラックにマウントする機器を選択する際に考慮すべき重要な要素をいくつか紹介します。

19インチサイズのラック

一般的に電子機器を収納するラックマウントのパネルの幅は、19インチになっています。また、パネルを固定するねじ穴の位置は規格化され、収納するデバイスの高さも規格化されています。サーバーラックは、電源ユニットのサイズを考慮して選ぶ必要があります。サーバーラックの標準幅は19インチですが、一部の業界では23インチ幅も使用されています。

19インチサイズのラック|松定プレシジョン

電源要件

最初のステップは、ラックに収容されるすべての機器の全体的な電力需要を確認することです。適切な容量の配電ユニット(PDU)を選択するのに役立ちます。
お使いの機器に十分なコンセントと回路保護を提供するPDUをお選びください。ご使用の機器に必要なプラグとコネクターの種類、電圧と電流の仕様を考慮してください。電源供給を遮断してはならないシステムでは、安全に電源を遮断できることが重要です。さらに、バックアップ電源としてUPSを備える必要があるかも検討します。

電源要件|松定プレシジョン

ラックのサイズと互換性

ラックを選択する際には、設置する機器のサイズと重量を考慮する必要があります。また、ラックに設置する機器との互換性を確認してください。ラックと機器の取り付け穴を確認する必要があります。また、電源などの重量物を取り付ける際には、サポートアングルなどで電源を保持する必要があります。ラックによっては、前面にカバーが付いており、埃やゴミ、誤操作から機器を保護することができます。しかし、その場合空気の流れなどを考慮する必要があります。

ラックのサイズと互換性|松定プレシジョン

冷却

ほとんどのラックシステムでは、機器を冷却するために空冷が使用されています。通常は、ラックの前面から空気を取り込み、背面から放出するファンが使用されています。
通気口をふさがないようにし、機器が十分に換気されていることを確認してください。また、ラックマウント機器の間にスペースを設けることも有効です。

冷却|松定プレシジョン

ラックシステム構築のポイント

一般的な19インチ機器ラックにすっきりと収まる汎用設計の電源は、ラックマウント電源と呼ばれます。小型で電力密度が高く、信頼性の高い動作が可能なため、さまざまな分野や用途で不可欠な存在となっています。ラックマウント電源の典型的な用途をご紹介します。

1.EV(電気自動車)

EVの開発やテストにはラックマウント電源が使用されています。バッテリーや双方向DCDCコンバータには、ラックマウント型の回生型直流電源(双方向電源)が使用されています。この電源は、効果的で安全なEV充電のための大電流と大電圧を供給します。
他にも、車載電装品などの開発や評価に高速な動作が可能なラックマウント型のバイポーラ電源等も利用されています。

EV(電気自動車)|松定プレシジョン

2.電子機器の評価や検査

ラックマウント型電源装置は、研究室での測定や試験用のツールとして使われています。これらのユニットは、回路検証、製品認証、電子部品の特性評価など、さまざまな試験用途に信頼性の高い精密な制御を提供します。
ラックマウント電源は汎用性が高いため、エンジニアは電圧と電流のレベルを正確に変更し、さまざまな動作状況をシミュレートし、消費電力を監視することができます。また、実験室での検査・測定装置の正確な動作も保証します。

電子機器の評価や検査|松定プレシジョン

3.自動試験装置(ATE)

ラックマウント電源は、被試験デバイス(DUT)に電力を供給するため、自動試験装置(ATE)システムに頻繁に搭載されます。これらの電源は出力特性がプログラム可能であるため、自動化された試験手順を人間の手を煩わせることなく実施することができます。
ATEシステムのラックマウント電源は、信頼性の高い試験結果を保証するため、正確で安定した電力を供給する必要があります。また、ATE環境にシームレスに統合するために、リモート・モニタリングや制御機能などの機能を組み込むこともできます。

自動試験装置(ATE)|松定プレシジョン

4.バーンイン

バーンイン試験は、電子システムやコンポーネントの長期的な信頼性を評価するために不可欠です。ラックマウント電源は、DUTに長期間にわたり電力を供給するため動作し続けます。
ラックマウント型電源装置は通常、通電試験中に高温および応力レベルで動作するように設定され、故障の可能性のあるプロセスを促進します。この徹底的なテストは、市場にリリースされる前に欠陥部品を特定し、取り除くのに役立ちます。

バーンイン|松定プレシジョン

5.半導体製造

ラックマウント型電源装置は、半導体製造に不可欠な要素です。イオン注入装置、エッチング装置、蒸着装置など、さまざまなウェハー製造ツールやシステムに精密な電力を供給します。
特殊なラックマウント電源装置が半導体製造装置に統合されることもあります。これらの統合された電源は、高品質の半導体デバイスを製造する重要なプロセスに、正確で安定した電源を供給します。

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6.テストツール

ラックマウント電源は、さまざまな試験機器に電源を供給し、パワーメーター、シグナルジェネレーター、オシロスコープ、スペクトラムアナライザーなどと共にさまざまな分野で広く採用されています。
検査機器の正確な動作は、ノイズが少なく安定した電力の供給にかかっています。ラックマウント電源の低リップルと低ノイズは、干渉を最小限に抑え、正確な読み取りを保証します。

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まとめ

ラックマウント電源装置には幅広い用途があります。これらの電源は、電気自動車の動力源から高度な試験や製造工程まで、あらゆるものを可能にし、現在の技術や革新に不可欠なものです。
技術の発展に伴い、電源装置のラックマウントの必要性は高まると予想されます。ラックマウント型電源装置は、電気自動車の開発、科学研究の促進、工業プロセスの支援など、今日の技術環境において極めて重要です。このユニットは、小型、高電力密度、設定可能な機能により、現代の電子システムで増え続ける電力需要を満たすのに最適です。

よくあるご質問

ラックマウント電源の「ラック」とは何ですか?

ラックは、電子機器を収納する従来のフレームまたは筐体です。電源、サーバー、スイッチ、その他のコンポーネントを整理し、構造化します。
IEC 60297は、国際電気標準会議(IEC)によって発行された国際規格で、電子機器の取り付けに使用される19インチラック、サブラック、およびプラグインユニットの機械的寸法を規定しています。これらの規格は、異なるメーカーの機器間の互換性を保証するものです。ラックマウント電源は、これらのラックに簡単に取り付けられるよう、正確な寸法と取り付け穴で作られています。

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ラックマウント型電源装置を収納するのに適したラックとは?

ラックマウント電源の収納には、通常の19インチラックが適しています。これらのラックにはさまざまな高さがあり、ラックの単位(U)で表されます。各ラックユニットの高さは1.75インチ(44.45mm)です。
設置する電源装置やその他の機器のサイズと数量によって、ラックの高さの選択が決まります。ラックの高さは24U(約1067mm)、36U(約1600mm)、42U(1687mm)が一般的になっています。また、ラックの耐荷重を考慮し、装着した機器がしっかりと支えられることを確認してください。
松定プレシジョンでは、電源の収納に適した高強度・省スペースラックRACシリーズ の製造販売を行っています。

ラックマウント型電源装置をラックに保管する際、安全対策は必要ですか?

ラックマウント型電源装置をラックに収納する場合は、以下の安全上の注意に従ってください。

  • 正しい取り付け:電源装置は、ラックレールで荷重を保持して適切なネジで固定してください。
  • 重量配分:ストレスや損傷を防ぐため、電源装置ごとにラックレールで荷重を保持してください。また、転倒防止のため、上下の重量配分を考慮し高い位置に重量物を配置しないようにして下さい。
  • 換気:過熱を避けるため、電源装置の周囲に十分なスペースを確保してください。
  • ケーブル管理:ケーブルが乱雑にならないよう適切に配置することで、スリップや転倒事故のリスクを減らします。
  • 接地:感電の危険を避けるため、電源装置とラックが適切に接地されていることを確認してください。

サーバーラックとFAラックに違いはありますか?

19インチラックには、サーバーラックやネットワークラック、ATEラック、FAラック、キャビネットラックなど様々な呼び名があります。どれも基本的な構造に違いはなく、用途に応じたオプションなどが用意され呼び名が異なっています。
電源の収納には、計測器や制御機器などのが収納できるFA用のラックを選ぶことで、必要なオプションを選択することが出来ます。

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