検索中...

技術コラム

電池の種類と課題

身の回りには様々な種類の電気製品がありますが、テレビや冷蔵庫などの大型家電製品など、コンセントから電源を取るものを除けば、電気製品は電池やバッテリーで動作してます。例えばスマートフォンやタブレット、音楽プレーヤー。大型のものでは電気自動車などがそうです。テレビやエアコンのリモコンなどにも電池は数多く利用されています。最近では家庭用にソーラーパネルで発電した電気を蓄え、夜に使えるようにするための家庭用大型蓄電池も開発・販売されています。電気自動車を蓄電池として活用しようというアイデアも出されています。
これらの製品の中には様々な形の電池や、充電可能なバッテリーが内蔵されていて、用途に応じて使い分けられています。ここではまず、電池の種類と、それぞれの電池が持っている問題点、課題について紹介しましょう。

まず電池の種類ですが、乾電池などの一次電池と、充電して繰り返し使える二次電池、そして化学反応により発生した電気を継続的に取り出す燃料電池に分けることができます。一次電池は使い捨てが基本で、内部で発生する化学反応によって電気を取り出しますが、化学反応を行う物質がなくなってしまうとそれ以上は利用することができません。それに対して繰り返し充放電できるのが二次電池です。同じく内部で発生する化学反応によって電気を取り出しますが、一次電池と異なるのはこの化学反応が可逆反応である点です。放電しきった後、つまり化学反応を行う物質がなくなった後は「充電」を行う事により、反応後の状態から反応前の状態に戻すことができるのです。これによって繰り返し利用することができるようになっています。

(a)充電時の電子の移動です。
(b)放電時の電子の移動です。

ただし、充放電サイクルには上限があり、またメモリ効果による一時的な電圧低下を起こすことがあります。そして燃料電池は主に水素と酸素を反応させることで電気を発生させます。この場合、水素は水素吸蔵合金に蓄えられたものを充填する方式や、都市ガスの中に含まれるメタン、エタン、プロパン、ブタンといった炭化水素に含まれる水素を遊離させ、空気中の酸素と反応させることで電気を発生させます。したがって水素源となる物質を継続的に提供し続けることができれば、電気を取り出し続けることができます。

各電池の特徴を知ろう

では、それぞれの電池の特徴を紹介していきましょう。

NiCd、NiMH

NiCdはニッケル・カドミウム電池、NiMHはニッケル水素電池を表しています。どちらも正極にニッケル水酸化物を使用している電池で、負極の方にはNiCdはカドミウムを、NiMHは水素吸蔵合金を利用し、電解液はKOH(水酸化カリウム)を主体とした水溶液を使っています。NiCdもNiMHもモーターなどの高出力用途に利用できるという特性がありますが、NiCdはイタイイタイ病を引き起こしたカドミウムを含んでいることから、より安全なNiMHへの置き換えが進んでいます。乾電池型の充電池として手に入るものは、現在ではほとんどがこのNiMHになっています。有名なeneloop、evoltaなどもNiMHです。NiMHの特徴として繰り返しの充放電に強く、安全性も高いというものがあります。一方、メモリ効果が強く、継ぎ足し充電を続けると、取り出せる電気量が減っていくという問題点を抱えています。このメモリ効果をリセットするには、一度、完全に放電しきってから充電を行う必要があります。

LiB

リチウム・イオン蓄電池の略称です。パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々な製品で使われています。乾電池型でない充電式の電池またはバッテリーで、身の回りに存在する電気製品では、ほぼLiBが使われていると考えて良いでしょう。また、電気自動車のバッテリーとしても注目されています。LiBはNiMHの約2.5倍という、非常に高いエネルギー密度を持っているため、携帯電話などのモバイル機器を軽量化するためには必須の蓄電池です。またメモリ効果がないため継ぎ足し充電が可能なことも利点ですし、長期間放置していてもあまり自己放電しません。

種類 自己放電率(%/月)
3~20%
ニカド 20~45%
ニッケル水素 15~40%
リチウム・イオン 1~5%

ただし、エネルギー密度が高い故に、わずかな電圧変動でも過充電になってしまい電池寿命を極端に縮めることにも繋がります。また過充電や過放電を繰り返すと電池の内部圧力が上昇し、破裂や発火事故を引き起こします。スマートフォンが爆発して大やけどをしたというニュースや、航空機でバッテリーが爆発したというニュースを見たことがある人もいるでしょう。

全固体電池

上記の電池の問題点として挙げられるのが「液漏れ」です。長期間入れたままにしていると、電池が膨れてしまって中に入っている電解液が漏出してしまいますが、これが「液漏れ」です。液漏れは短絡の原因になることもありますし、場合によっては内部の回路を破壊してしまいます。液漏れが発生するのは電解質に水溶液を使っているためで、これを回避するために電解質部分を固体にした、全固体電池が開発されています。利点はズバリ、扱いやすく、事故が起こりにくい点でしょう。

一方、欠点もあります。トヨタが電気自動車用に開発している全固体電池は、硫化物系の固体電解質と層状酸化物の正極を採用したリチウム・イオン蓄電池でも、現時点では体積エネルギー密度が200Wh/L程度しかなく、水溶液を電解質に採用しているものの半分未満しかありません。航続距離を伸ばすためには、体積エネルギー密度を400~600Wh/Lまで引き上げる必要があり、現在その開発が進んでいます。

空気電池

空気電池は正極に空気中の酸素を利用し、負極に金属を利用している電池です。補聴器やキッチンタイマーなど、小型で軽量の電気製品に使われています。

主にLi、Na、Caなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属を空気中の酸素と化学反応させて電気を取り出しています。従って、使わないときは酸素を遮断するためにシールドしておき、利用時にシールドをはがして装着します。利用する金属(元素)によって電池性能は異なりますが、電解液が必要ないため小型化できるのがメリットです。一方、充電時に金属がデンドライト成長を起こすなど、二次電池化が難しく、どうしてもリサイクルのためのインフラが必要になってしまいます。

燃料電池

燃料電池はこれまで紹介した充電池とは根本的に異なるものです。基本的には発電機と同じであると考えても良いでしょう。つまり何らかの燃料を提供し続けることによって発電機をまわし、電気を生み出しているのです。あまり身の回りにはなさそうな印象がありますが、家庭用の物であればパナソニックの「エネファーム」が家庭用燃料電池の代表例でしょう。基本的には燃料として提供する水素と空気中の酸素とを反応させて水を作る際に出る電気を取り出しています。いわば、理科の実験で行った水の電気分解実験の逆反応によって電気を取り出しているのです。ただし、水素は反応速度が速く、取り扱いに注意が必要であるため、例えば電気自動車への搭載を検討している燃料電池については、水素が周辺に漏れないように、漏れても溜まらないようにするなどの工夫が行われています。

電気二重層キャパシタ

近年注目されているコンデンサの一種です。電池と同じように電極と電解液から構成されていますが、電極間に(電解液が分解しない程度の)電圧をかけた際に、電極と異符号の電荷が電極周辺に増える領域ができます。するとコンデンサのように電位を蓄えることができ、これを電気二重層キャパシタと呼びます。

(a)一般的なコンデンサ
(b)電源二重層キャパシタは誘導体に電解液を使うことで、電極面積に比例した静電容量が得られる。

二次電池同様、繰り返し充放電できますが、電気二重層の形成までしか行わないため充放電速度が速いのが特徴です。ただし、二次電池と比較するとエネルギー密度は小さくなります。

一方、セラミックコンデンサと比較すると、エネルギー密度は高くなるものの定格電圧は低いのが現状です。

参考文献