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技術コラム

 

細胞の分析に欠かせない技術の一つにフローサイトメトリーがあります。この記事ではフローサイトメトリーの基本的な仕組みや、フローサイトメトリーを使った測定装置、フローサイトメーターの仕組みや活用方法について解説します。

フローサイトメトリーとは

フローサイトメトリー(Flow Cytometry)とは、1950年代に登場した細胞解析の技術です。観測窓を設けた管の中に細胞を含んだ流体を高速で流します。すると細胞が観測窓の前を通過していくため、この細胞を観測します。

フローサイトメトリーでは細胞の大きさや細胞の数、細胞周期などの細胞の特徴が測定できます。これにより不均一な細胞集団から個々の細胞の情報が得られます。

フローサイトメーターとは

フローサイトメーターとはフローサイトメトリーの技術を使った細胞解析装置です。フローサイトメーターのなかでも、細胞を分離する機能を持ったものをセルソーターやFACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)と呼びます。

近年ではセルソーターがフローサイトメーターと似た意味で使われることも増えています。セルソーターはフローサイトメトリーによって分析された細胞を分けて採取する装置です。この分類と採取を分取(ソーティング)といいます。

フローサイトメーターは大きく分けて2つの部位から成っています。一つ目は、細胞を流し、取り扱うための流路系です。もう一つはシグナルの検出器やデータ取得のためのプロセッサーなどを含んだ光学系です。

流路系では、シース液と呼ばれる緩衝液(バッファー)の中で、液の流れによって細胞を一つずつ一列に並べます。光学系では一列に並んだ細胞にレーザー光を当て、光電子増倍管で散乱光や蛍光を測定します。

セルソーターでは、この情報からターゲットの細胞に電荷を与えて、電圧のかかった偏光板で分離します。

これにより細胞一つずつの情報が取得できる仕組みです。乱れのない流れ(層流)の中で細胞を測定するため、細胞を傷つけずに測定できるのが特徴です。

セルソーター|松定プレシジョン

フローサイトメーターは、DNA量に基づいた細胞周期評価の他、蛍光標識抗体を用いた細胞表面マーカー解析や蛍光標識高分子などの細胞内導入解析に使われます。また特定の細胞を分取する際にも使われます。

フローサイトメトリーによる細胞生物学研究の実験スキーム

フローサイトメトリーを利用して細胞生物学研究の実験を行う際には、まずそれぞれの抗体に、何色の蛍光色素を割り当てるかの計画を立てます。

解析時に色が混ざって、どの細胞なのか分からなくならないよう、最大励起波長や最大発光波長、輝度のほか、フローサイトメーターで使用しているレーザーの種類なども考慮しながら色素を割り当てます。

続いて細胞の染色を行います。細胞の染色には直接染色、間接的染色、細胞内染色などの方法があります。測定する細胞の種類や、測定したい項目によって染色の方法を選びます。

蛍光色素の割り当てと染色が終ったら、検体をろ過し、細胞の塊などを除去します。塊があると流路が詰まってしまい、測定に支障が出るためです。ろ過が済んだら、実際にフローサイトメトリーを行い、その結果を解析します。

フローサイトメーターを用いた解析

フローサイトメーターは、細胞生物学の研究の他、分子生物学の研究にも使われています。特に、蛍光分子を用いて細胞表面や細胞内部の動きの解析や、細胞機能を見えるようにする解析などに活用されます。

分子生物学の研究を行う際には、フローサイトメーターを用いてモレキュラービーコンやタンパク質蛍光標識などを対象に特定の細胞を検出します。この測定により免疫細胞などを調べることが可能になります。

フローサイトメーターを使用した解析では、蛍光顕微鏡を用いた場合に比べ、複数のパラメータを同時に解析できたり、定量分析ができる、解析スピードが速い、などの特徴があります。