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技術コラム

 
電源性能をフルに引き出すための配線接続|松定プレシジョン

配線接続が電源性能に与える影響

一般のコンセントから得られる電気は交流で、瞬間的な電圧低下や高調波などのノイズが含まれています。また、交流の電圧も限られています。そのためノイズを取り除いたり、直流や交流、さまざまな電圧の電気を得たりする目的で、電源装置が使用されます。

しかし、電源装置と使用装置をつなぐ配線が正しく接続されていないと、電源の性能に影響を与えてしまうばかりではなく、火災や感電の危険性、電源装置の故障につながる可能性があります。配線が電源装置の性能に影響を与える要因は、大きく分けて次の2通りがあります。

配線が抵抗になる

配線に使われる素材は、抵抗の低いものが選ばれますが、配線の抵抗は0Ωではありません。インダクタンスや静電容量も持っています。それらの影響を少なくするためには、配線をできるだけ太く短くするのが基本になります。

配線に使用するケーブルに十分な太さがなかったり、ケーブルが長かったりすると、配線がもつ抵抗やインダクタンス、静電容量の影響が大きくなってしまうからです。そのため、電源側と使用する機器側で電位差が生じたり、ケーブルが発熱して火災の原因になるなどの問題が生じます。またON/OFFの応答が悪くなり、誤作動、誤計測の原因になったりします。

また、電源や抵抗の端子と配線が正しく接続されていない場合も、接続部分が抵抗となり、電源の性能が十分に発揮できません。コネクタ部のサビやゆるみがないか、確認が必要です。

ノイズの影響を受ける

特に配線が長い場合には、配線がアンテナのような働きをしてしまい、ノイズの要因になる場合があります。なぜなら付近の電気機器から発せられる信号やサージ、電波などを拾ってしまったり、周辺の磁界の変化を拾ってしまったりして、配線に接続された機器に影響を及ぼすためです。

また、配線が長いと共通インピーダンスノイズも発生しやすくなる問題もあります。共通インピーダンスとは、複数の回路の共通部分に存在するインピーダンスのことで、一つの回路の動作が別の回路の動作にも影響を与えてしまう現象をいいます。

共通インピーダンスを回避するためにも、配線は太く短くする必要があるのです。その他、余った配線をループさせたり、他の電源ケーブルと一緒に束ねたりするのもノイズの原因になり、電源装置の性能に影響を与えます。

正しく配線するための3つのポイント

電源装置と機器や抵抗をつなぐために配線は欠かせない要素です。配線による抵抗やノイズをできるだけ少なくするためには、配線を短く太くする以外にも次の3つのポイントを心がけるといいでしょう。

① 電力用、アナログリモート制御用、デジタルリモート制御用のグランドを共通で接続しない

電源の内部回路にもよりますが、電源の出力状態が変化するなどの影響によりグランド電位が揺れた場合、デジタル信号やステータス系などのグランドが共通だと、共通インピーダンスが発生してしまいます。

このような状態で発生するノイズをコモンモードノイズといい、電源装置やそれにつながる機器が誤動作してしまう可能性があります。コモンモードノイズの影響を受けにくくするため、グランドを共通で接続しないようにします。

悪い例(電力用、アナログリモート制御用、デジタルリモート制御用のグランドを共通で接続しない)|電源性能をフルに引き出すための配線接続
良い例(電力用、アナログリモート制御用、デジタルリモート制御用のグランドを共通で接続しない)|電源性能をフルに引き出すための配線接続

② リモート制御用の配線もできる限り短くする

配線が長いと配線そのものが抵抗になり、結果として共通インピーダンスの原因になります。電力用や信号系、パワー系だけでなく、リモート制御用の配線もできる限り短くしましょう。

③ リモート制御用の配線は高周波電源の近くを通さない

配線がアンテナのような役割を果たし、高周波電流が発する電磁波を受信し、誤作動してしまう可能性があります。例えばUSBでは、規格によって長さ5mまでとなっていますが、ノイズの多い環境では2mでも通信できません。

このような事態を防ぐため、リモート制御用の配線は高周波電源の近くを通さないようにします。
またデジタルリモート制御の誤動作対策として、電気ケーブルではなく光ファイバーを用いる方法もあります。例えば工場などノイズの多い環境や、長距離でのリモート制御が必要な場合には、光アイソレーションアダプタを導入すれば、電磁波によるノイズの影響を受けず、コモンモードノイズもありません。

電線の種類

配線に使用する「ケーブル」や「コード」。何となく使っている言葉ですが、それぞれの違いとは一体何でしょうか。

ケーブルとコードの違い

ケーブルは導線となる導体を絶縁体で覆い、さらにそれをカバーしたものを意味します。一方でコードとは導体を絶縁体で覆っただけのものです。つまり構造としてはコードの方が簡単で、耐久性や強度が低いのが特徴です。

そのためコードは、力のかからない場所や、屋内などの安定した環境でのみ使用されます。コードが家庭内で一般的な家電製品とコンセントをつなぐ配線として用いられるのはそのためです。一方でケーブルはさまざまな用途や場面で使用されます。

ケーブルの種類

ケーブルは耐久性や強度が高いため、電力や通信のようなインフラにも多く使われます。ケーブルを使うシチュエーションと、そこで使われる主なケーブルは次のようになっています。

電力線

電力の供給用としてもケーブルは使われます。電力用のケーブルには次のようなものがあります。

  • 地中送電ケーブル
  • 屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線(OC)
  • 架橋ポリエチレンケーブル(CV)
  • VCTケーブル
  • VCTFケーブル
  • IV電線

ただし、発電所などから送られてくる高圧の電気を供給する送電線には、裸電線という導体の周りを絶縁体で被覆していないものが使われます。

通信、制御ケーブル

通信や制御のケーブルは、耐久性だけでなく、周囲からのノイズをカットする機能をもったケーブルも使われます。具体的には次のようなものが挙げられます。

  • CVVケーブル
  • CPEVケーブル
  • 光ファイバケーブル
防災ケーブル

防災においては特に耐久性が求められます。建物などで火災報知器や非常時の連絡システムなどに使われるケーブルには次のようなものがあります。

  • FPケーブル
  • FPCケーブル