ロックインサーモグラフィ(Lock-in Thermography、LiT)は、半導体デバイスやプリント基板などの検査対象物にパルス状の周期的な電気エネルギーを加えて、局所的な発熱(ホットスポット)から欠陥や異常を見つける高度な検査技術です。従来の赤外線サーモグラフィでは出来なかったわずかな温度変化の検出により、欠陥箇所の特定がより迅速に行えます。ロックインサーモグラフィでは、高速赤外線カメラの画像取得を周期的な電気エネルギーに同期させます。ロックインは、この同期メカニズムに由来しています。周期的な電気エネルギーには、高電圧アンプやバイポーラ電源、パルス電源などが用いられます。電気エネルギーだけでなく検査対象物の熱負荷につながる超音波やマイクロ波、フラッシュランプ、レーザー、屈曲などの物理的な力などを用いる場合もあります。この技術は、製品の故障解析だけでなく、潜在的な欠陥解析や熱設計、バッテリーの熱解析などの非破壊検査にも役立ちます。
ロックインサーモグラフィの原理
検査対象物に入力された高電圧などの周期的な電気エネルギーは、剥離や介在物など不均質な熱物性の領域に遭遇すると部分的に反射します。反射した部分は入力パルスと干渉し、局所的な表面温度の干渉パターンを作ります。赤外線カメラによりこの熱反応を周期的にとらえ、ロックイン法で温度変化を抽出し解析します。ロックイン法によりS/N比を向上させることによりわずかな温度変化を検出します。ロックインサーモグラフィは、熱波の位相シフトと振幅を分析することで、亀裂、剥離、空洞、その他の表面下の異常などの欠陥を含む、検査対象物の内部構造に関する情報を導き出します。例えば、同期する時間の遅延時間を調整することで、発熱箇所の深さ方向や、問題箇所をより明確にすることがきます。
ロックインサーモグラフィは、エレクトロニクス分野、航空宇宙分野、自動車産業、材料科学など、さまざまな産業で利用されています。
- エレクトロニクス:電子部品や基板の短絡、電流リーク、ESD欠陥、ゲート酸化膜損傷、トランジスタなどの欠陥検出、太陽光パネル、絶縁破壊、ウィスカー
- 航空宇宙:タービンブレードや複合材構造物のような重要部品の内部欠陥検査
- 自動車:蓄電池、モーター、電子制御ユニットなどのコンポーネントの故障評価、電気自動車の蓄電池熱管理熱設計と熱解析:製品の欠陥解析、熱設計、バッテリーやプリント基板などの部品の熱解析